その昔、大陸は大きくいくつかの国に分かれていました。
殆どの国は人間が治めていましたが、一つだけ、人以外の様々な種族からなる
夜の国だけは人間ではなく吸血鬼が国を治めていました。
人と吸血鬼が隣り合って暮らすにあたり、吸血鬼は人の命を奪うほど血を吸うことはしないと国同士で誓約を交わしました。
しかし、夜の国の隣国を治める国王は、他の国よりも夜の国を異端視していました。
人間の体液を糧とする吸血鬼が、人との間の約束を違え、その命を奪うまで血を精を吸い尽くすのではないか。
そうして人を、人の治める隣国を滅ぼすのではないか。国土を奪われるのではないか。
疑心暗鬼の末、隣国の王は夜の国に戦を仕掛けました。
この戦で、夜の国の王である吸血鬼の真祖と隣国の騎士団長、そして隣国の国王自身も戦死してしまいました。
甚大な被害だけを残して双方の王が亡くなったことで、後継の王達は半永久的に休戦協定を結ぶに至りました。
――それから20年あまり。
休戦中とはいえ、まだまだ吸血鬼を異端とする考えが根深い人の国に紛れ込んだ吸血鬼が一人。
真祖の血と力を分け与えられたその吸血鬼は、未だ恋を知らず性別も定まらず、
男とも女ともつかない身体で人の世の中を渡り歩いていました。
そんな中で、吸血鬼は自分と同じく先の戦で父親を亡くした騎士と出会い、
その騎士の元に居候することになります。
来る者拒まずの騎士とビッチの吸血鬼が繰り広げる、ハーレクイン風ギャグファンタジー。